型番の設計の考え方
ほかのガイドは「型番がすでにある」ところから始まります。このページは、その一つ前です。 これから製品の型番を決める人、既存の体系を整理し直す人に向けて、 あとから読み解ける型番の決め方を、架空の型番を1つ育てながら書きます。
型番は一文である
良い型番は、区切りごとに一つの事実を述べる短い文です。 「どの製品群の」「どの寸法で」「どの取り付け方の」「何色か」。 読む人は左から右へ、大きな分類から細かい違いへと降りていきます。
だから並び順は、変わりにくいものを左に、変わりやすいものを右に置きます。 製品群は何年も変わりません。色や付属品は季節ごとに増えます。 改訂記号は最後です。左に置いた事実が変わるのは、それが別の製品になるときだけです。
架空の型番を一つ、育ててみる
屋外用の温度センサーを作ることにします。最初の案は、開発中の呼び名をそのまま使ったものでした。
TS2-OUT-NEW
これには問題が三つあります。TS2が「温度センサーの2代目」なのか「2チャンネル」なのかが決まっていない。
OUTは屋外の意味ですが、屋内用が出たらINで済むのか、保護等級(IP)で分けるのかが決まっていない。
NEWは来年には嘘になります。
一つの範囲に一つの事実、を守って組み直します。
TS-A2-W67-M12-R1
| 範囲 | 事実 | 今の選択肢 | 増え方 |
|---|---|---|---|
TS | 製品群(温度センサー) | TS | ほぼ増えない |
A2 | 検出方式と世代 | A1、A2 | 数年に1つ |
W67 | 保護等級(IP67) | W54、W67 | 用途ごとに |
M12 | 接続 | M8、M12、CB(ケーブル直出し) | 顧客の要望で |
R1 | 改訂 | R1 | 互換性のある変更のたびに |
「屋外用」という曖昧な言葉は消え、保護等級という測れる事実に置き換わりました。
「NEW」は改訂記号になり、来年R2が出てもR1は嘘になりません。
この型番を実際に図にしたものを作例に置いています。
表の5行がそのまま5つの項目になります。A2だけは方式と世代の2つを1つの範囲に入れた例外で、図の見出しを書く段階でそれに気づけます。
幅を揃え、余地を残す
同じ事実を表す範囲は、製品群の中で同じ文字数にします。
接続がM8とM12で2文字と3文字に割れると、表計算で並べたときに列がずれ、目で読むときにも一瞬迷います。
上の例ではM8とCBが2文字、M12が3文字でずれていますが、最初に3文字と決めてM08・M12・CBLと揃える手もあります。どちらにするかより、決めて守ることが大事です。
選択肢が今は2つでも、その範囲に何個まで入るかを最初に決めておきます。 英字1文字なら26通り、英数2文字なら千通り以上です。 「今は足りる」で1文字にした範囲が、あとで足りなくなると、体系ごと作り直すことになりかねません。
避けたい文字
- 0とO、1とIとl。印刷でも画面でも見分けにくく、電話で読み上げると区別がつきません。どちらか一方だけを使うと決めるか、両方とも使わないのが安全です。
- 全角の英数字。半角と混ざると、検索や照合のしくみによっては一致しなくなります。実際に使うシステムで確かめてください。このツールでは、型番に全角英数字が含まれていると「半角に直すと字間が揃います」と注意が出ます。
- 英数字と記号以外の文字。型番に日本語を入れると、海外の取引先のシステムで文字化けすることがあります。このツールでも、図版の書体に無い文字として注意が出ます。
- 区切り記号の混在。ハイフンと空白とスラッシュを場所ごとに使い分けると、入力する人が迷います。区切りは一種類にします。
読めるかどうかを試す
決めた型番が本当に読み解けるかは、作った本人には分かりません。
構成図を1枚作り、図だけを渡して、体系を知らない人にTS-A2-W54-CB-R1が何かを言ってもらいます。
「保護等級が下で、ケーブル直出し」と答えられれば合格です。
詰まった場所が、範囲の切り方か見出しの言葉のどちらかに問題がある場所です。
図を作る途中で、このツールの検査も手がかりになります。 見出しが空の項目、表記や説明が未入力の選択肢は「やること」として並び、 同じ見出しが複数の項目に付いていると「見出し「…」が2件の項目で重複しています」と出ます。 重複は、二つの範囲が実は同じ事実を表している合図であることが多いです。
決めたら書き残す
体系は、決めた人の頭の中にあるうちは体系ではありません。 構成図をJSONで保存し、製品群ごとに1枚ずつ持っておくと、新しい人が入ったときに渡すものになります。 改訂で範囲が増えたら、その図を開いて項目を足し、保存し直します。
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